神の手のひら

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教室に静寂が流れる。少女はその目を疑い、少年はただじっと見つめた。机の上のダイスが示す、二つの1を。 少年は黙ってダイスを手に取り、息を整える。今まさに、その手で人生を決めようとしているのだ。 「ちょっと待って!」 「待たない」 少女の要求を呑むことはなく、少年は持ち上げたその手を、ゆっくりと開いた。 少年が放たれた物体を目で追う。少女が放たれた物体を目で追う。これまでと同じように放たれた音は、何故か不快な音には感じなかった。 「さあ、約束通り、付き合ってよ」 天井へと向けられた二つの赤い丸を挟んで少女に向き合い、少年が言う。その顔は紅潮しているが、薄く笑みが浮かんでいる。少女はダイスを見つめ、その表情は少年からは見えない。 完全に同意の上での賭けではないため、少女がそれを言えばきっと簡単にこの勝負は無効となるだろう。そんなことは少年にもわかっている。だから、聞いたのだ。少女の意思を、好意を確認するために。
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