さらなる地獄

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   *   *   * 「只今、不法侵入者から八王子市立体育館を解放し、日本の医療団体を招聘しました!」  自衛隊特殊部隊の司令官が、国会議員たちに報告した。 「よし。一刻も早く被害者の救助に当たるように。」 「了解!」  司令官が立ち去ってから、国会議員のひとりがつまらなそうに愚痴る。 「全く。海外の連中はこちらの立場も考えず、勝手に乗り込んでおいしいところを持って行くから迷惑だわい。」 「同感じゃ。わしらの救援活動を邪魔しに来ておいて、何もしていないような言い方をされては、立つ瀬がないではないか。」 「平和な時には排除しろと言われる自衛隊が、こんな緊急時に役立つ事を愚民どもが理解できればええ。」 「そうじゃそうじゃ。わしらは一切無駄な金は使っておらん。常に万が一に備えておるだけじゃ。」 「この核シェルターのようにな。」  ヴェルヴェットのカーテンと真紅の絨毯に囲まれながら、最高級のブランデーをカラスミで味わい、国民に選ばれた者たちは酒宴に明け暮れていた……。
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