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時期は正月、場所は地元の神社。
参拝客は普段よりかは多いが、三重に鎮座する伊勢神宮に比べれば、雲泥の差…。
放たれた鶏達は、我が物顔で歩く。
小さい癖に、出店はしっかりでてる…。
「…」
祈りを込めてお辞儀をすれば、颯爽と去る一人の女…。
次の参拝所へ向かう。
しかしふと、カーナビに表示された“阿漕ヶ浦”に目をやって、指でそれをなぞる。
憂いた顔で眺めていたが、すぐにハンドルをにぎり、車を出した。
そしてどうしても、津にくればここにくる。
“津城跡地”のある、お城公園。
「平助…」
いないと知りながら、寒空の下、百合は彼が嫌っていた家紋が描かれた、“蔦”を眺めていた。
「フフッ」
彼らの先祖が眠る、この隠れたように建たれた小さな神社に参拝をして、百合は渋滞する前に、四日市に戻るのであった。
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