“あの日”から…

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“店を出す”と決めたとき、皐月と美那には「まず、マンションから」と、引っ越した。 美那は「実家に帰る」といい、マンションと共に旅立った。 それから皐月と共同で住みつつ、資格だなんだと付き合ってもらい、彼女が結婚するまで百合といた。 まだ一年も経っていないが…。 「そろそろ帰ってくるんじゃないん? 第一、うちが勝手に姪っ子連れ出してどうするん?」 『…』 「どーせ、皆が弟ばっかり可愛がるからやないん?」 『そんなこと…』 「うちにはそう、見えたんやけどな~、…あ」 二階の階段を上れば、小さな人影がうずくまるように、百合の帰りを待っていた。 『…百合?』 「兄さん悪いが…、ここに家出娘が居ったに?」 呆れたように見下ろせば、少女は顔を上げる。 「…百合ちゃん」 「何しとんねん?桜?」 兄の声が聞こえてくるが、時間も時間。 「明日、迎えに来てや」 それだけ言って、切った。 「…」 無言でコートの裾を握る姪に、百合は頭を撫でてる。
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