“あの日”から…

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肴に、これも持ってきた“さめたれ”を食べながら、桜を見れば、不安そうに聞いてきた。 「サクが来た理由、聞かんの?」 「聞いてどうするん?」 百合はまだ十歳の姪に、質問する。 「…」 「ま、聞くとしたら、よう無事でココまで一人で来たな~ってことと、初めての“家出”の感想くらい?」 空になったお銚子を逆さまにして、桜を見た。 「お金はお年玉があるから、不思議やないに? あんたが人様の金を捕るだけの度胸は無いからな~」 呑気に言ったかと思えば、百合は問う。 「なぁに?聞いて欲しいん?」 もう三十路なのに、歳を感じさせない艶やかさで、姪に質問した。 「…」 話を聞けば、やはり弟のこと。 更に思春期と、今年の入学も加わって、親戚一同、弟に構いっぱなし。 叔母である百合に子供はいないから、百合の祖父母の家にでもいけば、親戚一同がいるが…。 「(確か、三日には行くとか言っとったな~。 じいちゃんそういや、癌の転移検査で、年明けたら入院とか言ってたな~)」
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