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『…オレはこの後、どうなるのかな?』
懐かしい匂い、優しい声、大好きな温もり…。
見上げれば、二人布団にくるまれて、最期の夜を過ごしていた。
『(…平助や…)』
そこにいたのは藤堂で、百合の頭を撫でる。
百合もじゃれるように、彼の腕を遊べば、ふと藤堂は手をとる。
『本音は、お前と何処か遠くへ行きたい。
江戸でも伊勢でも何処でも…。
百合の側で、酒を飲みながら…』
『…』
『ずっと百合の、“恋人”ってやつでいたい』
真剣な彼に、百合は笑う。
少々誤解があるが、百合は身体を起こして笑う。
『なら、“最後に愛した”のはうち?
ダーメ、平助はまだ若いんやから、前に約束したように、うちとは真逆な嫁さん貰いな~?』
本心ではないが、段々透けていく…。
百合は誤魔化すように、肩から浴衣を羽織り、酒を掴む。
『いーい?
絶対に、なんの肴もない“一人酒”は飲むんやないに?
花見や月見で癒されて、皆で騒いで、飲み明かして…。
いつかうちの代わりの妻(ひと)と、飲みなよ?』
この最期の酒は、“夢”から覚めるモノだから…。
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