69人が本棚に入れています
本棚に追加
「試しの門が――」
バン!
そのとき、リビングの扉が荒々しく開いて、親父が現れた。
俺を殴りにでも来たのかと思ったのだけれど、様子が違う。
「父さん。ただいま」
「ああ」
「母さんから話聴いた?」
「うむ。嫁を見つけたらしいな」
「うん。今、試しの門の前にいるんだけど、全部開けたら親父に会えるよって言ったら、全部開けるんだって頑張ってる最中」
「開くと思うのか?」
「どうだろうね。まともには無理だ。だから、なにか手を考えてくるんじゃないかな。ポーは試すのが好きだから」
「そうか」
と、言ったっきり、親父は筋肉隆々とした腕を組んだまま、獣のような鋭い眼差しで窓の外を見つめている。
バタバタバタバタドタドタドタドタ……。
「ミル、煩い」
汗だくになってリビングに駆け込んで来たのは次男のミルキだ。
あいかわらず、どこもかしこも太って丸い。ピンク色のワイシャツがいまにもはちきれそうで――実際、ボタンがいくつか弾けとんだ。
「あ、あ、あに、あに、兄貴、あれ……!!今、玄関のモニター見てたら……!!!!」
「ポーを見たのかよ、ミルキ!!」
「俺も見たい!ねえ、どんな念使ってた?」
最初のコメントを投稿しよう!