0【ポーに会う前の話】

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錠とか、そんなのをつけるつもりはないけどさ。 君が、俺の側にいたいと言ってくれるように。 望んでくれるように。 できる限りのことはするつもりだよ? さて。 標的の男の、人生最後のめくるめくセックスもようやく終わりを迎えたようだ。 丸々太った体格のわりには、何度もよくがんばっていた。 男の寝室は広く、分厚いカーテンのかかった大窓が、寝台のすぐ側にある。 窓は閉まっていて、カーテンの隙間から、深夜に登り詰めた満月が覗いていた。 射し込む月明かりが、ナイフのようにサックリと夜を切る。 俺は、離れた位置から針を放った。 狙いは男の後頭部。まっすぐに、脊髄に深く打ち込む。 男は、女の身体にうつぶせになって倒れこんだ。 続けて放った一本を、女の首にも打ち込んだ。 悲鳴も、うめき声もなかった。 男は死んだ。 女のほうは、眠らせただけ。 お仕事終了。 お疲れ、俺。 「……ん?」 富豪オヤジの絶命を確認し、使用した針を回収したときだ。 眠らせた女の髪の色が、やけに鮮やかに目に飛び込んできた。 月の光の中で輝く、明るい、栗色の髪。 肩にかかるくらいの長さで、毛足には弛くカールがかかっている。 そっくりだ。
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