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ある晴れた春の日のこと。庭では四歳になった次女のユウが遊んでおり、それに付き合って長女のメルト、そしてミカエルも遊んでいる。彼女たちを縁側に腰掛けながら見守るのは隻腕になった渡とナディの二人だ。
「暖かいね。」
「だな。」
元気そうな三人。空からは暖かい日差し。なんともない、平和な世の中である。しかし、渡の表情はどこか暗い。
「…あおむし。」
「ちょっと、メルト!?何をしてるんですか!?来なくていい!!来なくていいから!!早くその葉っぱに乗ったのをぽいしなさい!!こっちにぽいじゃなーい!!」
こんな楽しそうな雰囲気でも渡の顔には影が差している。そんな彼の顔を覗きこむナディ。
「具合悪いの?」
「いや、少しユウのことを考えてた。あの子のこれからのことだ。」
訝しげなナディに説明を続ける渡。
「俺はこの国で最強の人間として生きている。血のつながりの無いメルトにも人の目がいくだろうが、ユウにはもっと大人たちの汚い目がいくと思うんだ。俺の実子として生きるのは辛いことだと思う。無責任な期待は人を簡単に壊す。」
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