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お姫様が泣き始めたところで、たくさんの兵士達が部屋に入ってきました。
お姫様が襲われた。助けろ。
そう声を上げたのは、森で二人を妬んでいた兵士でした。
お姫様は部屋を出されてしまいました。
廊下まで短い悲鳴が漏れています。
止めようと、泣きながら部屋に入ろうしますが、入れてはもらえません。
扉が開くこともありません。
だんだんと兵士の声が小さくなっていき、やがて消えてしまいました。
扉が開いて、ぞろぞろと兵士達が出てきます。
一人の白い布を持った兵士がお姫様に、もう大丈夫です。と言いました。
白い布は赤い点がいくつもついていました。
布の下から、ぽたぽたと赤い水が滴っています。
お姫様が兵士の布を奪って広げると、変わり果てた兵士の姿がありました。
お姫様は泣きました。
部屋で泣いた時なんて比べ物にならないほど泣きました。
兵士達はお姫様を赤い兵士から遠ざけようとしますが、しがみ付いて離れません。
王様が怒っても放しません。
お姫様は動かないで、ずっと泣いています。
太陽が三回昇って、月が三回沈みました。
お姫様の声が止まりました。
お姫様がいなくなった国は、他の国に取られてしまいました。
自分のためにお姫様を使おうとした王様。
一人の兵士のことが好きになったお姫様。
自分の考えを曲げようとしなかった兵士。
お姫様に近づこうとした兵士達。
国に住んでいる人達。
その国の人達は誰も幸せになれませんでした。
『ある国のお姫様』
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