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「あ、僕ここで降りるんで。失礼します。」 「え?私もここ。」 「「…。」」 沈黙が痛いよ。 「取り敢えず降りましょう。出発してしまます。」 「そうだね。」 …さぁ、困ったぞ!駅から歩いて帰ってるんだけど…。 「道、同じなんだね。」 「らしいですね。」 紙を見ながら歩く彼。らしいってことは、引っ越しでもして来たのかな? 「あ、ここだ。」 立ち止まる彼。 「は?」 「はい?どうかしましたか?」 だってここ…。 「ここ、あたしん家。」 「…はい?」 「ちょっと、その紙見せて!」 ガチャ 私が彼から紙を奪おうとすると、玄関の戸が開いた。 「おー!そろそろ来る頃だと思ってたよ!お前も一緒だったか!さぁ、あがりなさい!」 この無駄に活きのいいのが兄ちゃん。社会人一年生。彼女無し。家の中に入る私達。 「ここが今日から君の家だ!」 「は?」 この人は何を言ってるんだろう? 「あれ?言ってなかったか?彼、今日から家族の一人になったから。」 「は!?私、何も聞いてないよ!?」 「親父からメール着てなかったか?」 「着信拒否。」 「…あー。」 勝手に納得してないで説明してほしいんだけど。ほら、彼だってどうしていいかわかんなくてオロオロしてるじゃん。 「親父の友達の息子さんらしくて、そのお友達が長期の海外出張になったからうちで世話することになった。以上!」 うるさい。 「父さんが心配したみたいで、僕も知らないうちにここで厄介になることが決まっていました。あ、邪魔だったらすぐに帰るんで言って下さい。」 慌てて言う彼。 「あ、邪魔なんて思ってないよ。ただ、兄ちゃんと親父は何も言ってくれなかったなって頭にきてるだけ。これからよろしくね。」 「あ、はい!よろしくおねがいします!」 元気そうに言う彼。こうして私達の共同生活は始まった。 『フランスパンの居候』
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