其之参

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「何処かで聞いたことのある話だな」 「随分ぶった切ったね」  ハハ…と彼は苦笑する。 「そうだ、今日は君に聞いて欲しいことがあるんだ」 「何?」  彼もまた話をぶった切って私と向かい合う。 「このベンチ、どうして設置されたかわかる?」 「?…お前の為にお父さんが設置したんじゃないのか?」 「まぁそれもあるけど…」と彼は続ける。 「このベンチ、作ろうとした段階で君のお母さんが言ったんだ。『一緒に座ったら仲良くなれるんじゃない?』ってね」 「…つまりこのベンチは私とお前のために…」 「そう言うこと」  お母さんはいつも私のことを考えてくれていたんだ。  彼の為に作った…だなんてお母さんに失礼だった。 「じゃあ次…どうして僕がこんな格好をしているかわかる?」 「趣味じゃないのか?」 「趣味と言われれば趣味なんだけど…」  と、狐面を頭に付けて甚平を着ている彼は腕を組んで苦笑い。 「もう一つ、理由があるんだ」
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