コーヒーフロート

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鈴の音がなり、店内に誰か入ってきました。 「ゴメン、待たせちゃったみたいだね」 そう言って頭を掻く彼にわたくしは頭(かぶり)を振ります。 「いえ、時間通りです。ただわたくしが早く着きすぎただけなのでお気になさらず」 「そっか…。ありがと」 そういって彼はわたくしの嫌いな、いつもの笑みを浮かべてます。 それが恥ずかしくて、思わず、ぷいと顔を背けてしまいました。 わたくしと彼はしばらくの間他愛のない話で盛り上がります。 「初めて行きましたけど、カラオケって楽しいものですね」 「ははは。カラオケも楽しいけど、それより一緒行く人がいたってことが重要だと思うよ」 そう言っていつもの見透かすような笑みを浮かべてます。そうです、いつもそうやって、わたくしの想いなんてわかっているくせに、知らんぷりする。 本当はあなたに早く会いたくて約束よりも早く着いてしまったのです。他の誰でもないあなただったからこそあんなに楽しめたのです。 全てわかっていながらあなたは何もしない。あと一歩、あなたがわたくしに歩み寄ってくれれば、最後の一歩を踏み込めるのに。 悔しくてぷうっと頬を膨らめます。口に含んだアイスコーヒー。広がる苦味に少しだけやきもきします。
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