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お代わりの水を持ってきた店員さんに、彼はメニューを開き、注文します。
「すいません、バニラアイス一つ」
「―――……あっ」
思わず声をもらしてしまいました。
すぐに持ってきたアイスクリン。彼はそれを美味しそうに食べております。それを恨めしげに見つめながらアイスコーヒーを飲みます。
「――食べる?」
掬い上げられたアイスクリン。そのまま彼はアイスクリンの乗ったスプーンをわたくしの口の前に持ってきました。
嗚呼、アイスクリン。意地悪な氷菓子の誘惑。
一瞬のためらいの後、恐る恐る彼の差し出したスプーンを口にします。
とろりと蕩けるアイスクリン。口の中の苦味を押し流し、広がる優しい甘さ。
――コーヒーフロート
意地悪な苦味と優しい甘さ。街角で夏とすれ違ったような気分です。
その気だるい苦味が甘味に恋をさせるのです。
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