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「もしもし、辰巳か?久しぶりだな」
雲一つない青空の下……昼下がりの公園のベンチに座る青年が携帯片手に声を上げた。
少し長めの黒髪にダークスーツを着崩ている姿からは、真面目な会社員からは、程遠い。
ヘラヘラと笑いながら、青年は、電話の相手である友人と昔話に花を咲かせていたのだ。
「元気だぜ!俺は相変わらずだ。しかし、お前……親の後を継がないなんて、相変わらず変わってんねぇー」
『それは伸二にも言えるだろ?ああ、そうだ。今度の連休暇?』
電話口から、友人ののんびりした声が聞こえる。
黒髪の青年……伸二は、暇だぜと答える。
『じゃあ、うちの実家に遊びに来いよ。美味い酒でも飲みながら話そうぜ!伸二、元気ねーみたいだから、慰めてやるよ』
「いいねぇー。ならお言葉に甘えるか」
そう言うと、伸二は、携帯を切り青空を眺めた。
「辰巳、相変わらず鋭いな」
切れ長の目を細め、口角を持ち上げた。
数週間前にあった痛ましい事件により、多少、へこんだ気分だったが、友人との会話により気分が晴れた……懐かしい友人の顔が思い浮かんだのだった。
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