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「朱里、オレが若菜さん……お母さんの様子を見てくる。なんなら、一緒に行くか?」
「うん!ほら、杏里。来いよ!」
「すぐに戻る。なんなら、ワインでも飲んでて待っててくれ」
辰巳の台詞で安心したのか、機嫌を直した朱里は、杏里の手を引いた。
辰巳は、伸二らと草壁にすぐに戻ると言うと部屋を出ていった。
「……えっと、若菜さんって…」
気まずさを残したままの空気に耐えられなかったのか、神崎が口を開く。
「ええ、旦那様の奥様で御座います。お身体が弱く、療養の為に離れにある自室で過ごされています」
草壁が静かに答える。
「若林君、君は下がっていい。持ち帰った書類のチェックとスケジュールの調整を頼む。草壁、別室に若林君を案内してやってくれ」
「承知しました」
トランクを若林に預け、新一郎が疲労を滲ませた表情を見せた。 美しい秘書は、それを受け取り、草壁に案内されるまま、静かに退室したのだった。
一部始終を静かに眺めていた伸二は、腕を組む。
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