第二話 「久遠家」

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ノックが三回したのち、草壁が食堂にやってきて、新一郎の側にやってきた。 「お食事中、失礼します。旦那様……お客様が…」 と耳打ちすると、新一郎の表情が曇る。 (お客?それにしては、穏やかじゃないな) それに気付いた伸二は、首を傾げ、成り行きを見ていた。 「帰ってもらえ、私は忙しいんだ。食事の後も、仕事が山積みだ」 「……しかし」 「余りにしつこいなら…」 「あら、つれないねぇ」 突如、女性の声がし、全員が声がした方向に目線をやる。 そこには、小柄な女性が佇んでいた。 赤紫色に派手な柄の艶やかな着物を着こなし、髪を結い上げている。年齢は、染められた髪に白髪が目立つのを見れば、それなりの年だろうと判断できるが、服装や派手な化粧の為か四十代ぐらいに見える。 その女性は、艶やかに笑うと新一郎を見た。
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