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「こ、困ります!勝手に入られては!」
草壁が慌てて、和装の女性に駆け寄るのを、新一郎の眉間に一瞬、皺が寄せながら見ていたのを、伸二は、唖然とした様子で眺めていた。
「で、どうしょうってんだい?坊や」
「藤子さん!どうして、此処に!」
挑発的とも見える笑みを向ける藤子という女性を見て、辰巳が驚いた表情で席を立った。
朱里と杏里は、きょとんとした表情で彼女を眺めている。
名を呼ばれた藤子は、辰巳を見るなり、表情を和らげる。
「辰っちゃんじゃないか!いい男になったねぇ。あんなにわんぱく坊主だったのにねぇ」
辰巳に歩みより、抱き締める。対して、辰巳は照れ臭いやら、驚きやらでリアクションが出来ないでいた。親子の様な接し方をする藤子に伸二らが目線を注いでいると、彼女は此方を見た。
「おや、男前が三人もいるじゃないか、誰だい?」
「……オレの学生時代からの友達だよ。真ん中が須田伸二、金髪の人が神崎さんで、若いのが弟の椎名龍之介だ。オレが招待したんだよ。つか、離れてくれ……苦しいって!藤子さん」
「へぇ、あたしは、野々村藤子。辰っちゃんや新一郎の祖母にあたるんだよ、宜しくね」
藤子は、にっこりと笑いながら言った。未だに抱きつかれている辰巳が伸二らを紹介した後、朱里と杏里に視線をむける。
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