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「あっちにいる双子の子がいるだろ?男が兄の朱里、女が妹の杏里。兄貴と若菜さんの子供だよ」
そう紹介した後、双子は、頭を軽く下げる。
二人を見て、藤子は、嬉しそうな表情を向ける。
「可愛いじゃないか!幾つだい?アンタたちは母さん似だね。あたしは、若菜ちゃんが好きでねぇー。お嫁に来た時から知っているんだよ」
ペラペラとよく喋る藤子にあっけを取られていた新一郎が、勢いよく席を立ち、足早に彼女に歩み寄る。
彼の表情は、険しかった。
「お話なら後で聞きます。ですが、今は、須田様がたをおもてなししていますので、一旦、お引き取り願いませんか?藤子さん」
「ええ、言われなくっても退散しますよ。お邪魔だものねぇ?じゃあね、辰っちゃん。朱里に杏里」
新一郎の威圧にも怯まず、藤子は、気ままに振る舞い、草壁に連れられ、食堂を後にした。
嵐が去った後の様に静けさが漂う……気まずさからか、誰もが無言で食事をし、気まずいまま夕食を終えた。
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