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「お前のお袋の妹?」
食後、辰巳の自室に招かれた伸二は、ウィスキーを飲みながら、先ほどの女性、藤子の話を聞いていた。
正面に座る辰巳は、頷きながら、自分のグラスにウィスキーを注ぐ。
「オレの母親とは、年が離れているんだよ、五十代だったかな?若くみえるよな。ああやって人を振り回すような人だけど……なんか憎めないんだ」
「お前は好意的だが、新一郎さんは、そうじゃないみたいだな」
「ああ、お互いに嫌い合ってるよ。無理もないけどな」
ウィスキーを一口飲み、グラスをテーブルに置く。
「昔から大変だな、辰巳ん家」
伸二は、静かに呟くと目を少し伏せた。
高校生の時に母親が病死し、同時に母方の親類を頼る様に実家を飛び出したのだ。
何故か、父親とは元々、折り合いが悪かった上に兄である新一郎とも相性が悪いらしく、必要以外、彼らの事を話さなかった。
兄が結婚し、父親が病に倒れたのを切っ掛けに実家に戻ったらしいが、辰巳の心情に変化は無く、父親が死んでも、憎んだままなのだ。
恐らく、新一郎や藤子にも何らかの確執があるのだろうと伸二は思った。
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