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「あら、あれ位ではアタシ酔わないわよ~。まだまだイケるわよ。伸二とは違うんだから」
「兄貴、うるせぇよ」
後部座席に座っていた、黒髪に鋭い目付きをした少年がハッキリとした声で呟いた。はしゃいだ声を上げる神崎に尖った台詞を投げ掛ける人物は、椎名龍之介……神崎の腹違いの弟で中学生になる。
神崎は、ムッとした表情になるが、弟に剃刀みたいな鋭い目付きで睨まれ、つまらなさそうにしながらも黙ったのだった。
静かになった車内には、軽やかでテンポがいいメロディ、それに合わせた明るく透き通る様な歌声が車内に心地よく流れており、椎名は、それを聞き、目を細めている。
「柚木乙葉が好きなのか?椎名。いいよな、あの娘の歌声」
伸二がバックミラー越しに椎名を見て尋ねた。
それを聞き、椎名は口を開く。
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