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「別に普通だけど、伸二さんのGT-Rに乗りながら聴くのが良いんだよ。伸二さん、運転上手いし……オレも早く免許取りてぇよ」
「歌に関する答えじゃないじゃない。伸二の愛車か伸二の運転技術がいいのか……どっちなのよ……龍之介」
「両方だよ」
神崎がチラリと椎名を眺めながら言う。 兄弟のやり取りを聞きながら、伸二は浮かべている笑みを更に深めた。
「相変わらず仲がいいんだが、微妙なんだかだな。面白くって好きだけどなー」
「つーか。兄貴やオレなんかが一緒に行っていいのかよ。部外者だぜ」
椎名な疑問を口にした。昨夜、伸二から、連休に友人の家に一緒に行こうと誘われ、今に至るのだ。
「いいって。ダチには言ってあるし、歓迎してくれるってよ。二人には世話になってるしな~。一緒に息抜きしよーぜ」
バックミラーに映る伸二は、屈託なく笑っている。常に笑っているか、飄々とした態度でいる。
まるで仮面を被って振る舞っているように思えてならないでいたが、椎名には、どうでも良かった。
「そういう距離感がイイんだよ。分かる?伸二さん」
普段、他人と距離を置き、兄である神崎以外には、なかなか気を許さない椎名もそんな伸二を信頼しており、兄の様に慕っていたのもあり、今回の誘いに乗ったのだった。
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