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「変じゃないだろ。そんな状態でも泊まりで勉強会開くって、良い友達じゃないか」
つまらなそうにしていた美奈だが、友達の話をすると少し表情が和らいだ。それに気を良くしたのか、二人の会話も弾んでいく。
「俺の方はさ、中学ん時からの親友がいて……今日もここに来てるんだけど、そういやさっきから見ないな。欽二の奴、どこ行ったんだ?」
「……それって、あの筋肉質で背の高い人だよね?」
「そうそう……って、良く覚えてるな」
「だって集会の時はいつも一緒にいるから。結構目立つ組み合わせだしね」
幸助はそれに驚きを隠せなかった。彼は自分達が目立つ理由を美奈に問いただした。
「目立つっていうより、印象に残りやすいっていうのかな。見たまんまインテリ系と、見たまんまガテン系。なんか、一緒にいるのが不思議な感じ」
幸助は笑ったような困ったような、そんな複雑な表情になる。そんな苦笑いの表情からは、一見すると不釣合いなコンビであることを自覚し、何度も言われているのだろうと察せられた。
「まあ確かに正反対なんだよな、俺らは。でも昔から不思議と馬が合うんだよ」
「良いよね、そういうの」美奈が紙コップに残った梅酒を全部飲み干した。そして軽く微笑む。「人は見た目だけじゃないってことだよね。外見は合わなさそうに見えても、心の中では通じ合えるものがあるから……」
彼女が言葉尻を濁したのは、この言葉が言った彼女自身の心にトゲのように突き刺さったからだった。心から通じ合える存在――彼女はそれを、大学という新しい環境に入ってから手に入れられずに思い悩んでいた。その原因が自分のせいだということも分かっている。自分から接近しても、心理的な壁を作りだしてしまうのだ。
現に今、幸助との間にも壁が一枚存在している。真横に座っていながら、騒がしい中でも聞こえるように近接していながら、彼女は幸助の目を見て話そうとはしていないのだ。何度か彼の方に目をやることはあっても。
「でもその逆もあるだろ? 似ているのに犬猿の仲とか。いや、その場合はむしろ似ているからこそかも」
「うん、なんかそれ分かる。主人公とライバルって何故か似てるんだよね」
「あとは、性格が真逆なのにもかかわらず意気投合してるとかな」
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