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彼女らの外出の発端を遡ると、昨年の末にまで及ぶ。その時美奈は入った大学のサークル紹介でふと目にしたゲーム研究会なるサークルに所属していて、その冬合宿に参加していたのだ。入部した理由は単純、面白そうだったから、だ。
ゲーム研究会というのは、平たく言えば遊んで遊んで遊び倒そうという目的の、良く言えば享楽的な、悪く言えば堕落的なサークルだった。その範疇はテーブルトークRPGを皮切りに、携帯型ゲームやカードにボード、果てはバクチ(もちろん賭けるのは疑似コイン)まで幅広い。ゲームを通して部員同士での幅広い交流を図る、というのが主旨で、研究会の看板など名ばかりなのだ。
しかし、このようなサークルが冬合宿を敢行するというのは奇妙な話だ(むろん夏合宿も行い、美奈はそれにも参加した)。結局やっていることはいつもと同じで、夜まで思う存分楽しめるのと、合間にアルコールを飲めることぐらいしか違いはない。一番の違いは畳の上で遊べることだろう。
だが元より楽しむこと自体が存在意義と言ってもいいサークルだから、メンバーは誰もそんなことを歯牙にもかけない。ただある数人を除いては――美奈もこのサークルの奇妙さに気付いてつまらなそうにしている、そんな一人だった。
時刻は午後十時を回り、二十数名のサークルのメンバーは夕食と風呂を済ませ、一つの部屋に集まってゲームに興じていた。その多くがジャージなど寝間着なのに対し、美奈は白いカーディガンに紺のスカート、チェック柄のニーソックスという格好だった。
彼女は女子の輪に混じって大富豪(彼女らはこう呼ぶ)に興じていた。酒が回っているせいか周りのテンションは高く、それと対比して、いや比較するから一層、美奈の心持ちは沈んで見えた。首筋にかかる程度の長さしかない髪の毛をいじって気を紛らす彼女のことを心配する者もいなかった。
ちょうど平民で上がった所を見計らい、彼女はそこから抜けた。自分の紙コップに半ば無理矢理注がれた温くなったビールを飲み干し、苦味に眉をしかめる。美奈はこれが好きではなかった。そもそも彼女は十九歳、この国の法律では飲んではいけない年齢だ。
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