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「アノ! 早く水をかけて」
後ろにいた青年は、少女と同じ顔をしていた。身長差のせいかこちらが年上に見えるが、双子かもしれないとキリエは思う。アノは、網に捕われたキリエを覗き込む。
「イリーナ……、これ、本当にそうなのか?」
アノは失礼にもキリエを指差しながら、イリーナに問う。
「だって、黒髪に、黒目なんて珍しいし、間違いないでしょ」
イリーナは自信満々に言い切る。僅かの疑いも持ってはいないようであった。
「でも、あれって喋るのか?」
「喋るんじゃない?」
わけの分からない会話にキリエがついて行けるはずもない。口も挟めず、逃げ場もなく、呆気に取られるだけである。
「逃げる前に、早く捕まえなきゃ! クロモノマネザル!」
イリーナの一言に、キリエは思わず口を挟む。
「サル!? 僕はサルじゃあ……」
キリエの叫びも間に合わず、どこからか取り出されたバケツの水が少年を襲った。
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