三重院 刹那

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この18年間生きてきた俺が手にした物と言えば、女の扱いだけ。   俺にとってはどうでもいいたったそれだけの事だ。 他の同性から見ると十分羨む事かもしれない。   けど、俺にとってそいつらの方が羨ましかった。 家族や友達、恋人にある確かな絆を持つそいつらが。 母を亡くして以来、俺にはそれがなくなってしまった。 だから他の人が持つ確かな絆が妬ましく感じて、奪ってやりたいと……そう思うようになっていたのかもしれない。   それがいつの間にか歪んでしまって体だけの関係へ蝕んでいた。   そんなもの欲しくなかったのに、毎日に渡る行為自体の歯止めは無くなっていた。 繰り返す旅に心が空虚になっていくのを感じていた。 どんどんと自分が駄目になっていく事がはっきりわかっていた。   それでも止める事ができなかった。   この行為をやめてしまえば、他人と関わるきっかけを失ってしまうかもしれないから。   ……もう一度、言おう。   俺には顔だけしかない。 心なんてもうとっくに壊れている。 それでも、どこかでまだ他人と繋がっていたいと思うのは、まだ心が壊れきっていない証拠だとでもいう事なのだろうか……?  
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