恋愛クッキング

ハジマリ

「どの女の話だよ……」

かったるい声を出しながら、ひとまず背負っていた鞄を何も置かれていない机の上に置く。

「Ｋ大の香代ちゃんだよ。俺あの子気に入っていたのにさ。お前ってやつは……手を出すのが早すぎなんだよ」

「言っておくけど、俺からじゃないからな。向こうが勝手に誘ってきた。それに乗っただけだよ。相手も本気じゃないと思うし」

「うわぁー、ひくわぁー。それモテ男の言葉だから言えるんだぞ。くそー、羨ましい」

「いやいや、……だいたいお前にあの子を紹介したのにお前何もしなかっただろ。てか、高月って基本俺が紹介した女全員手を出していないじゃん」

「バカ野郎！　女ってのはな、自分で見つけるもんなんだよ。他人に紹介されるもんじゃないんだ」

……おい。なら、なぜ紹介してって言うんだよ。

ムッとなって言おうとしたが、その場の空気が崩れそうだったので言わないでおく事にした。