取り引き

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外に人がいるとしたら、“向こう側”の人に違いない。 でも、ここでじっとしていたってどうしようもない。 コンコンとドアをノックして、耳を澄ませた。 ドアの外の音は聞こえない。 今、何時なんだろう。 付けていたはずの腕時計がない。 着ていたパーカも無くなっている。 天井にはいくつか天窓が付いていて、そこから日が差しているのはわかる。 でも何時なのかはわからないし、もしかしたら朝早いのかもしれないとも思う。 人が近くにいたとして、その人、起きてるだろうか。 「すみませーん」 ドンドンと今度はグーでドアを叩く。 「誰かー!」 そうしてまた耳を澄ますと。 クスクスという忍び笑いのような声がした。 ドア越しの私に聞こえているということは、実際微塵も忍んでいないのだけれども。 それから、開けてあげて、という柔らかな声がして。 その声の通りにドアが開いた。 ドアの向こう側には、金髪の細目の男が仏頂面を私に向けて立っていた。 「俺を使ってんじゃねーよ」 彼のその第一声は、私ではなくあの忍び笑いをした人物にあてられたものだろう。
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