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「髪短いなあ、男かと思った。誰かの女?じゃ、秋野のか?ちっちゃくて細くて可愛いね」
「…………」
「駄目だよ、女の子がこんなとこに来たら。危ないに決まってる」
「…………」
身体が緊張で固くなる。
口では優しげな言葉を垂れ流す、朗らかな声。
ギリギリと強く掴まれ上に引かれ続ける髪の毛のせいで、頭が痛い。
背の高い影が、見下ろしてくる。
ニコニコと、人懐っこそうな笑顔を崩さないまま───
「……あれ?」
───だったのが、不意に目を見開く。
「なんか見たことあるな。君」
「……い、」
「なんでだろう。うちのとこに来たこととか、ある?」
「…いた、っ……」
「え、何?聞こえない」
「やめて…っ…やめてください!」
「ねえ、俺に会うのは初めてじゃないよね?」
「はなして……っ!」
「どっかで絶対、会ってるよな?」
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