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『こより』
彼に出会えた事が嬉しかった。
『俺の所に来るか』
嬉しくて堪らなかった。
私をあの寂しい家から連れ出してくれた、私をどん詰まりから救い出してくれた人。
一度だって私を否定しなかった人。
一度だって私を傷つけなかった人。
『それって、秋野にとっての君が本音をぶつけていいような相手じゃないから?君は秋野にとっての特別なのかな。秋野はどんなつもりで君といるんだろう。君自身どう思う?』
『君はきっと……もっと、色んな事に疑問を持った方がいいと思うよ。君の周りを取り巻く、色んな……優しいものにね』
珍しく機嫌が悪そうに聞こえた声が、ちくりと胸を刺そうとしたのがわかった。
聞こえないフリをした。
今はそんな事は考えない。
私は秋野さんの、あの優しさが好きだから。
だからお願い、今余計な事を考えさせないで。
『さやかさんって本当にキレイだよな』
例え私が知らない何かがあるんだとしても。
私は秋野さんのあの優しさが好きだから。
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