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家の近くには、お母さんが男の人を拾ってくる通りがあった。
裏に並ぶボロボロのアパートなんか目にも入らないくらい、目を刺すようなギラギラの街。
夜はいつもその賑やかな街を、小さな体でふらふらした。
綺麗なお姉さんが、「子供がこんな所にいると危ないよー?」とクスクス笑った。
でもそれだけだった。
怪しい笑顔のおじさんは、「あげるよ」と私に甘い飴をくれた。
何の疑いも無くそれを口にすると、周りの人がすごく笑って「大丈夫ー?」私を撫でたりしてくれた。
「悪い人に捕まっちゃダメだよ」とかるーく言われて、「バイバイ」と輪の中を追い出されて。
それだけだった。
だけど、それがとても嬉しかった。
実際彼らは私がこの街でどうなろうと興味が無くて、ただそこにいたから面白がってちょっかいを出しただけでしかない。
そこに優しさなんか微塵も無い。
それでも私はそれが良かった。
警察に通報されて保護されてお母さんのところに帰されるよりも、ネオンの光に晒されて、いつも楽しそうに優しそうに見える人達を見ていたかった。
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