2241人が本棚に入れています
本棚に追加
家では笑わなかった。
学校では初めこそ無理して笑ったものの、ほとんど喋らない私に友達なんてできなくて、そのうち無理をする必要もなくなって。
先生が話しかけてきたときだけ、歪な笑顔を浮かべるだけ。
自分の笑った顔が嫌いだった。
気弱そうな卑屈そうな笑顔を、お母さんに見られたく無かった。
中学に入ってからは学校もさぼりがち。
私に興味が無い街に入り浸って。
誰も私に話しかけない中で、一人で制服を着て歩いた。
私を不自然じゃなく一人でいさせてくれる、あのカフェが一番落ち着いた。
休みがちな私に学校からかかってくる電話に、お母さんは一切出なかった。
そうしたら、先生がわざわざうちに来た。
お母さんは心底面倒臭そうに対応していて、先生が帰った後に私を呼ぶこともしなかった。
私は定期的に休みながらも学校に行くことにした。
もう先生に家に来てほしく無かった。
街をふらつく日と、学校で机に突っ伏す日の繰り返し。
人と話すなんてほとんどしなかったから、そのうち声も出なくなったような気がした。
秋野さんに会ったのは、そんなある日だった。
最初のコメントを投稿しよう!