取り引き

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「一つは所謂、戦略上の事情だね。君を抑えておくことで、俺にとって都合のいい事情がある」 親切げにそうのたまう【オギ】を、どんな顔で見ればいいのかわからない。 都合がいい? 喧嘩もできない私を抑えて? 「よく、わかりません」 「そう?」 軽い声に、私の精一杯の小さな呟きは短くいなされる。 「で、もう一つの理由は……、まあ、大したことじゃないから。今度ゆっくり話すよ」 更には二つの内の一つの理由すら、触れられもせずに流されて。 今度って、つまり。 “これから”を匂わせるその言い方に、ぞっとした。 「そ、それで私があなたに、わかりましたとか、言うと思ってるんですか?」 動揺から途切れ途切れになる声は、どう見ても余裕たっぷりな【オギ】に比べてあまりにも劣勢。 「おとなしく、ここにとどまるとか、思ってるんですか?」 それでも。 どんなにみっともない震え声しか出なくても、今ここで黙るわけにはいかない。
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