第1話*女の子には優しくするものだと教わりました

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賑やかな、でも小さな商店街。今日の空は薄い雲がふわふわ漂い、その間からはきれいなオレンジ色が広がっている。時刻はまもなく五時を回ろうとしていた。 「…先輩のことがずっとずっと好きでした!こ、これは私の気持ちです。受け取ってください!」 その場に居合わせた商店街の人々が一瞬ざわついて声の主がいる方向を見た。そこには顔を真っ赤にしながら手紙を差し出している女子高生の姿があった。 「えっ!?と…君は一年生、だよね?――――わかってるとは思うけど…。」 手紙を差し出された相手は少し困った表情をしている。すると女子高生は顔をバッと上げて目をキラキラさせて言った。 「はいっ!私の想いが届かないのはわかっています!…でも、すごく自分勝手なんですが、ちゃんと先輩に気持ちを伝えたかったんです!お願いします、受け取ってください!」 懇願するその目には涙が滲んでいる。すると相手は柔らかい仕草で彼女から手紙を受け取って、優しく微笑んだ。 「―――…ありがとう。君の気持ちには応えられないけど、嬉しいよ。大切に読ませてもらうね。」
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