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しかしあまりぼんやりしている暇はありません。これからアレクは職を探さなければならないのです。
職と言っても、職業は様々あります。店員、職人、事務員、指導者、技術者、農家、学者、芸術家、戦士。思いつく限りでもこれだけのものがあります。自分に適性のある職はどれだろう、と頭を動かし始めたところで、アレクはハッと気づきました。
よくよく考えたら、どこに行けば就職できるのか知らないのでした。
すっかり動揺し、何をどうすればいいのか、右も左もわからないアレクは無意味にオロオロとあちこちに目をやり、一歩踏み出そうとして元に戻ったり、手を動かしたあと頭を抱えたりと挙動不審な様子を見せます。そんなアレクを人々は訝し気に眺め、その視線に気づいた彼は顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
やっていけない。心が折れる音が聞こえるようでした。町に出るにはあまりにも自分は世間知らずだと思いました。もう帰ろうか、そうすれば冬が来て食料が尽きて自分は飢えて死ぬだろうが脆弱で無力な自分にはそれも当然の帰結だと、彼はすっかり落ち込みます。
彼が脆弱で無力なら、この世の大抵の生き物は灯りに集う羽虫以下になってしまうのですがそのことを指摘してくれる人間はここにはいません。
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