コール

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詐欺とか、そういういとではなくて、一生懸命に働いたロボットが無下に破壊されるのは、可哀想だと思ってしまうのだ。 だから欠陥品は直らないという主義のカーズとは、そりが合わない。 デジタルスコープをカバンにしまうと、マキは岩から腰を上げた。 「行くのかよ」 カーズが面倒くさそうにきいた。 ウェーブのかかったブランヘアーの青年は、てっとり早くあのロボットを破壊して帰り、空気清浄機のある事務所でベースボールの試合中継を見たがっていた。 「ええ。危なくなったら援護して」 「了解」 気のない返事だったが、それでもいいと思う。 性格のそりは合わないが銃の腕については、信頼するに値する同僚である。 マキは更正プログラムユニットを抱えると、愚直に同じ動作を繰り返しているクレーンロボットに近づいて行った。 4秒たったら、右。 その次は直進。 まっすぐ。 ターンして、また右へ。 そんな動きの隙をついて、ロボットの車体に飛びついた。 雨風に晒された車体は変色した塗装が剥がれ、赤茶色の錆びが吹き上がっている。 こんなになるまで働いてきたのだ、と思う。 車体をよじのぼり、プログラムユニットの外部入力装置を探した。
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