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夏の湿気で体はびっしょり濡れていた。
草のにおい。虫の声。ざわめき。静寂。暗闇。外灯。
マイケルはミニバンのボンネットに地図を広げた。腰には黒星(ヘイシン)…中国製トカレフ。
手下どもに説明する。地図は一軒の邸宅のものだ。
「まず妨害電波が出されてるから携帯も無線機も使えない。
この時間、女は二階の私室にいる」
そこを誘拐する。これまで何度も話し合った。直前になった今その必要はないだろうが念のため。
「ジョン…」
暗い瞳を見た。
「お前は囮だ。
俺達は正面入口から踏み込むから、お前は裏口で待機して9時になったら銃を撃って警備員をおびき寄せ。
撃ったらすぐに正面入口に行って俺達と合流しろ」
ジョンと呼ばれた男は不平の色を浮かべる事なく静かに頷く。
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