昔のお話

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「なぁなぁ!今日もあそこ行かね?」 「いいな!よし、行こう!」 二人の少年がその小屋がある森へ向かって走っていく。 少しおかしいのが、二人とも両手に石をもっているということだ。 僕はそんなごくごく"普通"の光景をぼーっと眺めていた。 (…たまにはつけていってみるかな) 僕は自分の気まぐれな気持ちに抗わず、気づかれないように二人を後から追いかけた。 おじさんやおばさんのような大人達にはあの小屋に近付いていけないと言われていたけど… 一度くらい、いいよね? あの子達も行ってるし。 …ちょっと怖いけど。 「今日は何処にする?」 「じゃあ…耳?」 「よし、じゃあ耳に当てたほうが勝ちな!!」 (耳…?) なんとことだろう? 動物にでも石を投げる気かな…? ということは、小屋にいるのは恐ろしい動物? でも、いくらなんでもそれはひどいんじゃあ… 「いて…っ」 周りの木に邪魔されて上手く進めない。 とげとげしてすごく痛い… これ、松の木だよね。 見渡すかぎり松の木だらけって…この森なんか変だ。 「おーい!いるんだろー?」 「出てこいよー!俺達と遊ぼうぜー!」 やっと少年達の姿を確認すると、小屋が目に入った。 少年達がしきりに叫んでいるのは、ズタボロの今にも壊れそうな木造の小さな小屋。 所々に穴があいていて、とても雨風は凌げそうにない。 そのまん前に立ってさっきの少年が叫んでいる。 僕は、松の木の影から少年達が両手に持っている石を見た。 「遊ぼう…だって…?」 (虐待もいいとこじゃないか…!) 両手に石を持って、何を言ってるんだこいつらは。 「おーい!人間様が遊んでやるって言ってるんだぜー!?」 「出て来いって言ってんだよ!"化け狐"!」 (化け…狐?) さらに大きな声で小屋の中にいるものに叫ぶ二人。 (動物…じゃないのか?でも今化け狐って…) それに耳とか言ってたし…。 …その時だった。 ギィ… 今にも外れそうな扉を開けて出て来たのは… 「女の、子…?」 だった。 でも、普通の少女とは違って、銀色に輝くの獣の耳と尻尾があった。 「うそ、だろ…?」 しかも、確かに動いている。 「………。」 少女は光の無い瞳で黙って少年二人を見つめた。 「おせーんだよ!」 「化け物のくせに!」 無言のまま静かに佇む少女に少年達はさらに畳み掛ける。
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