昔のお話

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「ごめんなさい…」 少女が発した一言目は謝罪の言葉だった。 かすれた、とても弱々しい声だった。 心なしか息が荒く、顔も少しだけ赤いみたい。 もしかして… 「フン、許さねぇ!」 ドンッ 「っ!」 少年がいきなり少女を押し倒した。 少女はそのまま地面へと倒れ込む。 (何をしてるんだあいつらは…っ!) 少女すぐさまはフラつきながら立ち上がった。 「…ご、めんなさい」 震えた声でまた謝罪の言葉を口にする。 (なんで…こんな…) 大人達は皆口を揃えて 『あの森の中の小屋には、私達人間に害を成す恐ろしいものがいるから決して近づくな』 と言うけれど、僕にはとてもそうは見えなかった。 そんな…普通の女の子じゃないか。 「謝る気があるならそこに正座しろ」 「…は、い」 少女は少年に言われるがまま、土の地面に正座をする。 「動くなよ?」 もう一人の少年がそう言い放つと、右手を振りかぶった。 ガンッ 「な…っ!?」 (なんて事をしているんだ…っ!!) 僕は思わず自分の目を疑った。 少年が手に持っていた石を思いっ切り少女に投げつけたんだ。 石が小気味いい音を立てて少女に当たる。 ゴンッゴンッゴンッそれでも少女は声一つ出さずに正座をし続けている。 顔に当たっても、手に当たっても。 目に当たっても、頭に当たっても少女は声を上げない。 例え、血が出ても。 歯を食いしばって堪えている。 ただ、表情だけは苦悶に満ちていたけれど。 「中々当たんない…なっ!」 「むかつく!!」 ガンッゴンッ 「…っ!…っ!!」 (行け…行くんだ…) こんな事があって良いはずがない…! (行くんだ…!) 僕は自分の足を叱咤して少年達の前に立ちはだかった。 「…!」 少女は信じられないというように見上げる。 「なんだよ!邪魔すんなよ!」 「化け物をかばうのかよ!!」 少年達は邪魔をした僕にそう叫んだ。 「こんなの駄目だよ!!まるで虐待じゃないか!」 僕はそんな少年達に負けじとそう叫んだ。 だって、こんなに苦しそうなのに。 「虐待?化け物を化け物扱いして何が悪いんだよ!」 「前は、こいつの仲間にこの村は襲われたんだぞ!?」 それは…確かに真実だ。 でも、それはこの子に対する少年達の態度の理由にはならない。
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