日常

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平沢深紅(ひらさわみく) 両親から、心深く美しくあれ、と付けられた名前は、今その願いを踏みにじっている。 高村青慈(たかむらせいじ) 私と同じように色を与えられた名前は、彼のお父様が、空と海のように広い心で命を慈しむ人であれ、と名付けたと聞かされた。 「何だか、似た者同士だね」 そう言って二人で笑って、初めて会ったその日、合コン会場のフレンチレストランから、お付き合いが始まった。 私はまだ19歳で、彼が初めての彼氏になった。 彼は25歳で、『経験豊富だよ』って一緒に来ていた同僚に言われてた。あながち嘘じゃないんだろうと思った。 ただ、恋愛初心者の私には、丁度いい。 見た目が良くて、人当たりもいい、女慣れもしてる。 この人と付き合ったら、友達との恋バナでも恥ずかしい思いはしなくて済む。 当時の私には、付き合う男の中身より、付き合っている男がいるという事の方が重要だった。 かなり勝手な女だった。 彼も、私と付き合わなかったら、もっと幸せになっていたかもしれない・・・ 後悔先に立たず。 それを嫌というほど味わう事になるのは、数年後だった。 ・
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