1・彼女の当たり前

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呆れて溜息を吐く巧の様子が横目に見えた。 「じゃあ聞くけどさ、分からない部分が見つからない時はどうすればいいの?って質問したことがある先生は、私と同じ高校2年生の頃はどんな質問をしてたの?」 突き刺すように泉水が聞くと、巧は「うっ」と声を上げる。 泉水の部屋にいる上、家庭教師という立場上、逃げ場は用意されていない。 「・・・どこでそんな情報を・・・」 「生徒会長の相原知輝先輩」 「相原の弟かよ・・・。兄弟揃って面倒な性格してやがる・・・」 頭を掻きながら小さく舌打ちをする巧を見て、泉水は子供みたいだと微笑んだ。 ペットボトルの栓を開け、グラスに注ぐ。氷がカラカラと音を立てて涼しげに聞こえる。 その様子を巧はじっと見ていた。 「見た目は大人っぽいのに、好きな飲み物はオレンジジュース・・・。アレだな。見た目は大人、頭脳も大人、好きなものだけ子供」 「せめて語呂を合わせるくらいはしましょうね。医大生が聞いて呆れる」 「・・・かわいくねーな」 女子高生相手にまともな反論も出来ず、巧は唇を尖らせただけだった。 「かわいくあろうなんて、思ったこともないよ・・・」 独り言のように反論した巧の言葉に、泉水も独り言のように呟いた。あまりにもか細いその声に目を見開く巧だったが、聞こえなかった振りをすることに決めた。 幸い泉水はオレンジジュースに夢中で巧を視界から外している。 .
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