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「え?じゃなくて。先生が高校二年生の時は、どんな質問してたの?って話なんだけど。まさかはぐらかすなんて事、しないよね?」
笑顔の泉水。
再び逃げ場を失った巧は諦めの溜息を零した。
「ひねくれた質問ばっかしてたよ。今の泉水みたいに、大学生レベルの問題の質問とか、初歩に戻って「先生はこの勉強をしていて役に立ったことありますか?」―なんてことも聞いた」
「あは、中学生みたい」
「オレはこう見えてガキなんだよ」
巧は、だからお前も背伸びなんてしなくていい。本当の自分になれ。と、遠回しに言っているつもりなのだが、
「さすがの私も真似出来ないね、それは」
と、届いていないようだった。
初めて会った敵がラスボス。そんな気分に近いのかもしれない。
これは長期戦になる。早めに諦めるのも一つの手か。と眼鏡を掛け直す。
今は泉水に合わせよう。
そう決めた。
黙っていれば可愛いのに、すごく勿体ない。
あ、と巧は一つ忘れていたことを思い出した。前から聞こうと思っていたことなのに、今まですっかり忘れていた。
「そういや泉水。体育は得意なのか?」
目の前に広がるテスト用紙は採点する方も清々しいであろう満点ばかり。
頭を使うものが得意なのは十分すぎる程に良く分かった。ならば、頭ではなく体を使う体育はどうなのだろうか。
大体は苦手だったりするのだが・・・。
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