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「嫌っていた?何故ですか?」
「彼女、とにかく無口で地味で冴えない女なんです。そんな彼女に情けをかけてコンパに誘ってやったのに、萌子は恩を仇で返したんです」
「と、いうと?」
「はい。萌子がコンパの最中に消えて、代わりに生意気な女を呼んだんです。その席にはユキが狙ってた相馬卓也もいて、その女と相馬卓也が消えたんです。全く、あの日は散々でした。あの女のせいでコンパも台無しになるし恥はかくしで、ユキは相当怒り狂ってました」
「そうですか、そんな事が……。で、その女というのは?」
「瑠璃香って名前の女です。かなり強気で生意気で、まあ、女のわたしから見ても綺麗な女でした」
「る……りか?」
瞬間、島崎は両肩を跳ね上げて喫驚した。
「どうしました?」
洋子の声。
「いいえ、何でもありません」
取り繕う島崎。
冷静になれ【瑠璃香】なんて名前の綺麗な女はいくらでもいる。そう思った。しかも俺の瑠璃香は二十一歳になると言っていた。周東ユキと年だって違うじゃないか。いやいや、年は関係ない。留年って可能性もある。いやいや、まさか……。
心は【瑠璃香】と聞いただけで、支離滅裂状態になる。
「あっ、そういえば」と洋子が言った。「ユキが萌子を責めてたんです。瑠璃香が萌子の屋敷に入る所を見たって、一緒に住んでると言ってました」
「一緒に?」
「まあ、萌子は否定してたから違うかも知れないけど」
「うーん」考え込む島崎。
「刑事さん、ユキは上林家を探ってたって言ってましたよね?」
「ああ、運転手の証言によるとそうだが」
「ユキが言ってたのを思い出したんです。ユキは瑠璃香の後を尾行して上林邸に着いたんですよ」
「そうか。そうだと辻褄が合うね」
「でしょ?ユキは相馬卓也の件で瑠璃香を恨んでいたから探ってたのよ」
「なる程」
最初からスピーカーにしていた為に、中村も一部始終を聞いている。島崎と中村の視線が絡んだ。
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