第一章  嘆きの門の向こう側

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 実際、王祖ガヤオ公以下、この地下世界に眠っているのは死人しかいなかった。 黄泉比良坂を降りきった場所が「黄泉の国」とも「あの世」とも言われるのは、そういう事実に則してのことだ。 「どうか彼のお方がその列に加わりませぬように。」  注意深く足を運びながら男は呟いた。 目深に被った黒いフードに隠れてその表情を窺い知ることは出来ない。 長身の身体を足元まで覆う黒いマント越しに見える、がっしりした広い肩幅と隙のない身のこなしで、この男が厳しい修練を積んだ武人であることが察せられる。 ********** ■注釈及び難読漢字をこちらにて■ ガヤオ公…ガヤオ・アルグ・メイサ。(カレント暦1549-1605) メイサ朝の始祖。“征服王” **********
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