風来坊の舞曲

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「では、お休みなさい」  話も半々にスピカがソファを陣取る。 「お休みなさい。では、見回りに行ってきます」  コアリスが、窓を開いた。柔らかい風が仕事場の空気を入れ替えた。開いた窓の向こうには大きな鷲が待機する。コアリスが作り出した鷲で名前をリスキーと言った。コアリスが窓枠を乗り越えて巡回に出ていく。 「やれやれ。誰が何をしに来たのかこれではわからんな」  コアリスを見送るヒルがぼやいた。 「簡単にいえば、アスカは昨日忘れた鞄を取りに。巡査は巡回の準備に。スピカ副隊長は仮眠に。御隠居は資料を取りに。そして俺は出勤してきただけです。つまり、目的ばらばらな隊員が玄関で鉢合わせて仕事部屋に同時に入った。ということです」  アクスが、仕事道具を机に並べながら律儀に説明する。 「皆が集まり、会議をする。そんな光景は夢のまた夢ですな」 「そうですね。隊長があれでは――っと。失言でした」 「いや。仕方あるまい」  アクスがわざとらしく口を閉じる仕種にヒルは笑った。 「まあ――いつものことですけれど。しかし、スピカ副隊長はなにを毎晩なにを探しているのでしょうか」  アクスがスピカに視線を移す。
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