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仮眠宣言から数分も経っていないというのにスピカは寝息を立てている。
「さて。わかりかねますな。問い詰めて話を聞く余裕も儂にはなし」
ヒルが、机に載せた資料を纏めた。
「御隠居は、今から大陸に出張ですか?」
「さよう。ラプラスが動いたと情報が届いておった。副隊長殿の手伝いはできん」
「わかりました。副隊長の件は俺が聞いておきます」
アクスは、ヒルを眺めてから承諾の意志を見せた。
「すまない。事務所を開けるのは忍びないが、宿敵ラプラスを潰すことは儂の使命なのだ――船の時間故、そろそろ暇する」
ヒルが、ステッキを持ち立ち上がる。数年前の戦禍で足を焼かれている。半分機能していない。上着を羽織ったヒルは鞄に資料を突っ込んで部屋を出た。
残されたアクスの深い溜息が残る。
この部隊は、隊長含む六人の部下で編成されている。しかしながら、統率はまるでなく、皆自由気ままに日常を謳歌していた。
その日の昼過ぎ。
スピカが仮眠から目覚めた頃、アクスは一息吐いていた。
女が、紅茶の香が漂う事務所に飛び込んだ。女は喫茶マドレーヌを経営しているミストであった。
「大変ですっ! 早く来てください!」
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