第三話 欠番の存在

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歪な戦車から撃ち出された数発の砲弾は、トシヒロの真ん中のシールドを粉々に砕いた。 トシヒロの手札に、それが加えられる。シールド・トリガーではない。 この状況をいくらかでもよくするためにシールド・トリガーを引きたかったトシヒロだが、そうそううまくはいかない。 「ここで、俺はターンエンドだ!!」 グレイ1は、余裕の表情でエンド宣言をする。 「俺のターン、ドロー!」 トシヒロはカードを引いた。 マナに今引いた『黒神龍オドル・ニードル』をマナゾーンに置いた。 「なあ、グレイ1」 トシヒロは、目の前の敵に話しかけた。 その様子を不思議に思ったグレイ1だが、すぐに余裕の表情に戻りそれに答える。 「どうした?敵に話しかけるとはどういうことだ?……投了でもするか?」 カードゲームでは自分の敗北が決まった時、将棋やチェスにおける「詰み」の状態になった場合、自分の負けを認め勝負を終わらせることが出来る。 それを投了(サレンダー)という。 「俺は本当に勝てない状況でも投了はしない主義だ。」 投了して負けを認めて逃げるくらいなら、正々堂々とシールドを全て破られ、トドメをさされた方がいい。シールドがあるならまだ、逆転のチャンスは手中にあるから。 「グレイ1、お前は、俺が勝てないと思ってるな?自分は、全てを捨てて戦ってるから、負けないって。そう勝手に、思い込んでいるッ!!」 グレイ1は、そのトシヒロの言葉を聞いて悟った。 トシヒロは、まだ諦めていない。そして、トシヒロが諦められない理由は、あの手札の中に……
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