第三話 欠番の存在

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マナも貯めず、カードも使わず、トシヒロはアタックステップに入る。 「行くぞ、『ボルメテウス・カオス・クリムゾン』ッ!!」 トシヒロは、叫ぶ。 魂の限り、この逆転劇を彩る、混沌の龍と共に。 対を為す2枚の翼で、混沌は飛翔した。 羽ばたく度にそれぞれの翼から、光と闇の粒子が辺りに蒔かれる。 闇の上に、光が重なり。またそれを闇が塗り替えていく。 高く、垂直に、グレイ1を見据えて。ゆっくり、飛ぶ。 バサッ、バサッ。死の羽音が、火山の呻き声をかき消す。矛盾に満ちた混沌が、世界にまた1つの矛盾を生み出した。 混沌の口元から、火の粉が溢れた。 龍の呼吸に合わせて、ボウッボウッと燃え上がる。 赤く、白く、黒い吐息。 それぞれが矛盾し、独立し、それでいて違和感なく1つに混ざり合っている、混沌の炎。 準備は出来た。後は、敵の城塞を灰に帰すのみ。 「ボルメテウス・カオス・ジャッジメント!!」 混沌の口から、輝くほどに白い吐息が吐かれた。 すべてを消し去る、陽電子の吐息。 出力は最大。グレイ1のシールドはすべて、手札になる事無く灰と化した。 しかし、それはただの余波だった。 混沌の息吹はたった1枚のシールドしか捉えていない。強力すぎる、その一撃。グレイ1は姿勢を低くし、余波に飛ばされぬように必死にデュエル卓にしがみついた。 息吹はそのままシールドを突き抜け、グレイ1の遥か後方にある火山を塵も残さず消し去る。 「スーパーヒーロー!!いっけぇぇぇぇぇ!!」 守るものがなくなったグレイ1に、ボルシャック・スーパーヒーローはもう既に肉薄していた。 特撮ヒーローのような空中から自由落下の蹴り。 勝負は、決まった。
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