第三話 欠番の存在

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「プレイヤー龍神トシヒロの勝利です。」 電子音声が、デュエル終了を告げた。 その電子音声と共に、溶岩の流れる火山の空間は一瞬で元の店内の様子に戻る。 グレイ1は右膝を地面につき、レジ前に跪く格好で、トシヒロとミツキはあの空間に行く前と同じ場所、レジに立っていた。 「プレイヤー龍神トシヒロに『爆熱兵ドラグ・クリムゾン』が譲渡されます。」 トシヒロの目の前が光り出した。 カードが、現れる。 トシヒロはとっさに右手を出し、それを掴んだ。 カードは、『爆熱兵ドラグ・クリムゾン』。先程グレイ1が使っていたブランクカードだ。 鎧を身に付けた竜人が右手にアサルトライフルを持ち、左手に身の丈ほどの大剣を構えたイラスト。 アサルトライフルは正面にかまえていて、今にも自分が射抜かれるのではと思ってしまう程の迫力がある。 カードを光らせる為のホイル加工は、鈍く光るデュエル・マスターズ最初期のものだ。 「……くっ、まさか、こんな『ブランクカード』があるとは!!」 のろり、とグレイ1が立ち上がる。 手を頭に当て、苦しそうに言った。 「おい、大丈……」 夫か、トシヒロの気遣いを遮り、グレイ1は言葉に静かに怒りを込め、踵を返した。 「次はこうはいかん。覚悟しておけ!!」 「待て、おい!」 グレイ1は歩き出した。自動ドアが開く。 追いかけようとしたトシヒロの肩に手を乗せてミツキは制止する。 「今、あいつを追ったって無駄だよ。追いつけない。」 その瞬間、店先に一台の大型バイクが止まる。そのバイクの乗り手、黒いライダースーツに黒いヘルメットを被った細身の男が、右手で「来い」とグレイ1に合図を出した。 グレイ1はそのバイクの後部に飛び乗った。そのままバイクは店から走り去った。
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