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迂闊だった
今、僕が慣れない朝食を作っていて
ヒョンは毎日の様に朝、目を腫らしていて
あんなに煩かったリビングは静まり返っていて
その事が全てを物語っているのに。
小さく唇を噛み締めキッチンへ歩みを進めると
僕が愛用していて、貴方が愛用していたマグカップが視界に入る。
『サ~スムっ!』
『痛!何なんですかいきなり…』
いきなりのし掛かってきた重みに睨み付ける僕を軽くかわして
貴方は嬉しそうに言葉を紡いだ
『なぁなぁ見てこれ、すげー可愛いだろ?』
手にしていたのは2つのマグカップ。
2つ並べると取っ手の所がハートマークになる、
なんとも幼稚な物
『…何ですかそれ』
『ペアカップ!』
『見れば解りますけど』
躍る心とは裏腹な態度で淡々と言う僕に
“可愛くねぇな~”
なんて言いながら貴方は笑ってたっけ。
『年取ってもさ、縁側に座って一緒にこれで茶飲むの。
俺とお前の愛の証』
“ずっと一緒だよ”
――…
そうだった
屈託無い笑顔で僕にそう話した彼は
僕を裏切り姿を消した。
それが何故かも、
いつからなのかも僕達には知るすべが無く
いつしか“5人だった僕達”は2人になっていて
僕の知らないグループが出来ていて
そのグループの頭文字に僕の名前は無くて、
「……っ、」
訳が解らなくて、
悲しくて寂しくて悔しくて憎かった。
僕は、貴方の何だったの―…?
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